松田幸紀

今回登場する松田さんは
「炉端かば」という超繁盛店をはじめとして
たくさんの飲食店を経営している方です。
彼は仲間と必死になって仕事に取り組んで
そこから生まれるものを心から楽しんでいるように見えます。
進撃がどのように始まって
これから仲間とともにどこを目指そうとしているのか…。
その舞台裏をちょっとだけ紹介していきます。

人物図鑑インデックス

松田幸紀_index
名前 松田 幸紀
職業 経営者
 
 

第4回 自分のこだわりを信じる

イ:「かば」は山陰・東京を中心に多店舗展開していますが、会社の成長に人材確保が追いついていかなくなることはありませんか。

松:あります。実際になっていました。

イ:それにどう対応していくんですか。

松:やはり出店のメリハリが重要だと思います。たとえば「今年は5、6店舗出そう」とか、「来年は1店舗に抑えよう」というように、出店スピードの変化をつけています。

イ:出店について、役員から異論が出ることもあるんじゃないですか。

松:出ますね。「ガンガン出店しましょうよ!」という人と、「ちょっと抑えていきましょう!」といういろいろな意見があって、僕はそれを上手く調整しているつもりでいるんですけど…。過去には、出店ペースが速くて人が追いつかない時期がありました。

イ:それは意図的にスピードを速めたんですか。

松:意図的でもあったり、出店のオファーをいただいたりとか、いろいろです。

イ:ビッグチャンスだったら、波に乗らないと次にいつ来るかわかりませんからね。

松:そうです。チャンスを見逃すと、二度と巡ってこないかもしれませんから…。

02

イ:会社がこれだけの規模になると、たとえば「コンサルをしますよ」という提案などがいっぱい来ると思うんですけど、受入れたことはありますか。

松:ありませんね。今後さらに店が増えた時は、ひょっとしたら必要なタイミングがくるかもしれないですけど…。

イ:それは意図的に入れないんですか。

松:営業には結構来られるんですけど、今のところは必要性を感じることがないですから…。

イ:コンサルタントは、やはり不安になるから受け入れるものなんでしょうか。

松:不安になったり、イメージ通りに会社の経営ができてないということ以外に、「もっと規模を大きくしよう」という積極的な場合もあると思います。その両極端じゃないんでしょうか。

イ:松田さんの会社は、そのどちらでもないということですか。

松:僕は店舗数を意識しているわけではないですから…。もちろん助言などはいただきたいので、たとえば東京で飲食の会などに入って、どんどん質問して、いろいろな情報を仕入れて、とりあえず何でもマネをしてみるという感じですね。

イ:生の話を聞いてきて、試してみて、試行錯誤を繰り返して、最終的に自分たちのオリジナルを作り上げていく…これはお家芸ですね(笑)。

松:特に僕の場合はそうだと思います。とにかくやってみる。ダメならやめるという感じです。だから、社員には「また社長がよそから情報を仕入れてきてやり始めた…」「またダメだった…」とよく言われます(笑)。「あれ、良かったですよ!」と言われるのは10個に1個ぐらいです(笑)。僕としては、10個に1個成功があれば十分だと思うんですけどね…。

イ:1勝9敗ですか。

松:仲間は「もっと負けてる」と感じているかもしれませんね…(笑)。

03

イ:そうやって、たくさん情報や経験を積み重ねていくと、「当たる店、当たらない店」というのが感覚的にわかってくるんじゃないですか。

松:「当たる店、当たらない店」「当たる場所、当たらない場所」というのは、だいたいわかっているつもりです。もちろん自分の感覚でしかないですけど…。

イ:それは、飲食業界の一般的な常識とは違うものなんですか。

松:全然違うと思います。たとえば、「このエリアに出店したい」と思ったら、乗降客数を調べるとか人の動きを調査したりするじゃないですか。これはあてにならないと思っています。

イ:でも、乗降客数調査は、場所を決める時に真っ先にやる重要事項ですよね。そういう常識を無視するのは怖いんじゃないですか。常識なんですから…。

松:確かに僕も東京で店舗を探す時に、最初の1年間ぐらいずっと調査していました。でも、視点を変えると「乗降客数が少ないからライバルも少ない」ということに気づいたんです。

イ:それでも、僕だったら調査しますけど…(笑)。

松:(笑)。たとえば「笹塚は乗降客が少ないけど、新宿に店を出すより競合が少ないし、コストもかからない」とすると、どちらが上手くいくのか。もちろん、いろいろなケースがあると思いますけど、少なくとも「一等地が絶対いい」というわけではないはずです。

イ:そういう感覚は、幹部の方と共通しているものですか。

松:当然、ぶつかることはよくあります。先日も、ある都市の駅前に商業施設ができるということでオファーをいただいて、僕は「話題性があるから出そうか」と言ったんですけど、専務は「あそこの施設で酒は飲まない」と反対するわけです。「わかってる。でもなんとかなるんじゃない?」「いや、ダメです!」というやりとりがあって、結局出店しませんでした。

イ:社長が折れたんですか(笑)。最終的に出店を思いとどまった決め手は何だったんですか。

松:専務の言うことが正しいと思ったからです(笑)。やはり話題性だけじゃダメですよね…。

イ:それは、今の「かば」にとっては「絶対手に入れるべきもの」ではなく、「それと同じようなものであれば、またオファーが来る」ということでもあるんでしょうね。

松:そうですね。

04

イ:他にもそういう事例はありますか。

松:大都市の駅前の物件だったんですけど、専務に見に行ってもらったら「NO」という答えでした。駅から数百メートルの場所で周りに店もないし…。僕はすごく気になったんです。

イ:でも、現地で見た専務が「良くない」と言ったわけですよね。

松:地図上なんですけど、僕の感覚では絶対いいんですよ。だからスケジュールを調整して実際に見に行ったんです。日帰り、滞在時間10分ぐらいで(笑)。直接確認すると、ものすごく良かったんです。その物件は向かおうと思っています。

イ:「コレはいける!」という確信を持つことは、よくあるんですか。

松:中国地方で言えば、三好(広島県)と浜田(島根県)のお店はいい物件だったと思います。特に三好店は「この場所しかない!」というところだったので、そこが空くのを4年間も待ったんです。

イ:他にいい場所がなかったんですか。

松:いや、あそこですね。不動産屋さんにも「ここは場所がいいから絶対空かない。他にも物件はあるよ」と言われて他も見たんですけど、逆に「あそこしかない」と確信しましたね。「10年でも待つ」と言ってたんですけど、4年で空きました(笑)。

イ:そこまでいくと、もう執念ですね(笑)。

松:あそこが空かなかったら、三好には出してないでしょうね。それだけ確信がある物件でした。

イ:強く思って、それが叶うところが凄いです。絶対に気持ちがいいと思います…想像ですけど(笑)

松:最高に気持ちいいですよ(笑)。

04

イ:「最高に気持ちいい!」というのは、壁にぶつかってそれを乗り越えた時の感覚ですよね。当然会社の規模が大きくなるほど壁は高くなっていくわけですから、ストレスやプレッシャーは相当あるんじゃないですか。

松:まぁ、なくはないですけど、あんまり感じないですね…。僕はどちらかというと「やればできるな」とか「なせば成るでしょ」という考えなんですよ。そう見えないかもしれませんけど…(笑)。だから、失敗して悩むことはそんなにないですね。

イ:それは凄いし、うらやましいです(笑)。

松:ちょっと頭が悪いんでしょうね(笑)。それが逆にいいのかなって思っているんですけど…。

(取材/2013年11月26日)

株式会社 かばはうす
  ホームページURL:http://www.robata-kaba.jp/

※当ページに掲載されている、写真の著作権はすべて
「株式会社かばはうす」と「株式会社インサイト」に帰属しています。

▲TOP