今回登場する松田さんは
「炉端かば」という超繁盛店をはじめとして
たくさんの飲食店を経営している方です。
彼は仲間と必死になって仕事に取り組んで
そこから生まれるものを心から楽しんでいるように見えます。
進撃がどのように始まって
これから仲間とともにどこを目指そうとしているのか…。
その舞台裏をちょっとだけ紹介していきます。
名前 | 松田 幸紀 |
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職業 | 経営者 |
イ:全国的に見ると、「かば」のように地元の食材で東京に勝負を挑んでいる居酒屋・炉端は多いんですか。
松:いっぱいあります。ただ、僕の知る限りでは、山陰と北陸はすごく少ないです。北陸は最高に魚が美味いんですけどね…。
イ:「最高に美味い」…食べてみたいです。
松:だから、僕は将来「ご当地の食材を使った『かば』を全国に広げたい」という思いもあるんですよ。
イ:面白いですね、それはいつ思いついたことなんですか。
松:最初は冗談で、「全国にひとつずつ『ご当地かば』があったら面白いよね。『秋田をこよなく愛してるかば』とか…」というような話をしたのがきっかけです。
イ:ブランドになれば、「『かば』は地元の食材を使った炉端だ」とわかりますからね。
松:「地元に根づいたお店」というのは、面白いと思います。実際に進めていくとなると、なかなか難しいかもしれませんけど…。
イ:「かば」のホームページに、「フランチャイズ(FC)募集」とありましたけど、あれはそういう展開の布石ですか。
松:全国に直営のお店を出すというのは、限界があると思うので、FCも使いつつです。FCについては、一昨年(平成24年)一年間で練り込んで、正式な募集は昨年の春から始めました。本当に興味ある方とこれから一緒にやりたいと思っています。
イ:面白い展開ですね。海外についてはどうですか。 日本の居酒屋が海外進出する話はよく聞きますけど、どういう展開を考えているんですか。
松:これは、もうずっと前から決めていたことです。山陰以外に進出するにあたって、首都圏に向かいつつ、「将来、絶対アメリカに進出する!」と決めていましたから。
イ:飲食の海外進出は、「まずアジアから」というイメージがあるんですけど、アメリカなんですか。
松:そうです。アジアもオファーがたまにあって、もちろん悪くはないと思っているんですけど、僕は個人的に「アメリカ」と決めているんです。「日本人たるもの、アメリカに行ってみようぜ!」という思いがあるんですよ(笑)。
イ:絶対出すでしょうね(笑)。
松:出しますね。
イ:当たるという確信はあるんですか。
松:場所さえ間違えなければ、当たると思います。
イ:海外進出というのは、日本の出店の方程式が通用するものなんですか。
松:通用する部分の方が多いと思いますし、自分なりにこだわっていこうと思っているところもあります。
イ:どういう点にこだわっていくんですか。
松:味です。海外に行って日本料理を食べると、その地域の味に変えていることが多いじゃないですか。僕は「それだったら出店する意味がない」と思いますね。だから、本来の日本の味で勝負したいんです。それで結構いけると思うんですよ。
イ:でも、現地の味覚に合わせる必要があるから、変えているんじゃないですか。
松:いや、最近は流通や情報が発達してきたし、日本式が結構受入れられてきていますから、逆にアレンジした日本料理が「日本の味じゃない」とわかると思うんです。
イ:舌が肥えてきているというわけですね。
松:出汁の味がわからなかったアメリカの方が、本物を「美味しい」と感じる時代になってきていると僕は思っています。
イ:同じような考え方をしている経営者の方はいるんですか。
松:僕の飲食の師匠で、神里隆さんという方がいらっしゃるんですけど、その方の影響をすごく受けているので、自然に同じ考えや物の見方をしていると思います。彼はアメリカではシアトルとポートランドにお店を持っています。
イ:どんな方なんですか。
松:相当変です(笑)。オーラを前面に出すタイプで、人を惹きつけますね。東京で飲食をやっている若手経営者は、みんな彼と話したいと思っているでしょうね。それぐらい憧れる方なんですよ。
イ:アメリカ進出も、その方を真似ているところがあるんですか。
松:ありますね。彼が先陣を切ってアメリカを南下しつつ店を出していますから、僕は南から北上しようと思ってます(笑)。もちろん、規模も出店ペースも違いますけど…。
イ:「かば」以外の業態をこれから積極的に出店する予定はないんですか。
松:「かば」は箱が大きいので、今度はまたちょっと違うもの…小箱で店舗数を増やすことをしたいと思っています。先日オープンした焼き鳥屋「炭焼やぶち」もその流れです。
イ:「ちょっと変化球も投げてみようかな」という感じですか。
松:「かばさん、頼むよ。ここでやってよ。ただし、カッコいい店をやってね!」というオファーが結構あるんですよ。そういう声に応えたのが、米子にある「魚キング」や、東京の「えびキング」です。
イ:他から提案があって、「チャンスだ」と思う流れには乗っていくということですか。
松:そうです。魚や郷土料理だったら「かば」でいきますし、カッコいい店だったら「キングシリーズ」でいきますし、以前から「焼鳥屋が欲しいんだよ」というお話が結構あったので、その声に応えて今回やったわけです。
イ:でも、焼鳥屋はすごくたくさんありますよね。どう違いを出していくんですか。
松:今回の焼き鳥屋は、北海道の知床の鳥を使っているんですけど、それが新鮮な状態で届いて、そのまま切って手刺しして焼いています。いい食材ですから、すごく美味いんです。そういう素材を仕入れるルートができたので始めたわけです。いいものが仕入れられないんだったら、やっていませんでした。
イ:いろんな店舗のオファーと、食材の情報が松田さんの頭で合わさって、「こういうお店ができるんじゃないか」という確信が持てた時に新業態を出店するというわけですか。
松:そんな感じです。たとえば「『カッコイイ業態でワイン』という要望か…なんか珍しい食材がないかな…じゃぁ、あそこの海老だな」という感じです。頭の中でカチャカチャ組み合わせていって、「これならイケる」みたいな…。
イ:松田さんのお話には終わりがありませんね。
松:僕にも、まだ見えていないものがたくさんありますから…。
イ:出店だけを振り返っても、山陰、東京、そして次は国内を攻めながら海外ですからね。
松:終わりがないですね。
イ:まぁ、宇宙はないでしょうけど(笑)。
松:いや、僕は会社の仲間に言ったことがあるんですよ「月に行けるんなら、月に店を出したい!」って。
イ:壮大すぎるし、そもそもお客さんがいませんよ(笑)。月までとなると、まさしく終わらない世界じゃないですか。
松:まあ、まずはできる範囲で…。やっぱり僕の能力もあるし、組織としての力量もあるので、ずっと永遠に拡大路線っていうわけにはいかないと思いますけど…。店舗を増やし続けることに意味があるとも感じませんし…。
イ:松田さんの今までの話を伺っていると、最初は地方の山に登っていて、次に富士山、これからはもっと高い山の頂きを目指すという感じですよね。現在、その高い山を登りつつある段階なんでしょうけど、そこから見る風景は以前の景色よりかなり違うものですか。
松:まったく違います。すごく面白いですよ。たとえば東京の飲食の会に参加しても、数店舗から数百店舗を経営している人までさまざまですけど、やはりある程度の規模にならないと、すべての人と話が合わないし、リアルな感覚がわからないですよね。もちろん、僕もわからないところがたくさんありますけど…。
イ:松田さんは、もっと高い山の頂きからの風景を見たいんでしょうね。
松:スケールの大きな商売をしている方は、見える風景が違うと思うし、まったく違うところを見ているという気がします。それを僕も見てみたいですね。僕自身を振り返っても、20代前半の自分と、30歳の頃と、今と…多少なりとも違う風景を見ていると思いますから、これからもそうありたいですね。
イ:それは、人としても成長しているということにつながりますか。
松:仕事に関しては、少しずつ前に進んでいるとは思いますけど、人としてはどうでしょうか…。まだよくわかりませんね…。
イ:最後に伺いますが、何かを犠牲にしないと、何かを得られないと思いますか。
松:思います。自分の時間は、これからも徹底的に仕事に賭けていく覚悟はしています。
(取材/2013年11月26日)
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