今回登場する井田さんは、梨を作っている農家の方です。
なんだか生きづらい世の中で、
「この道は危ないな」って思っていても、
とりあえず大きな流れに身を任せてしまう…。
そんな方は多いと思います。
「ちょっぴり不安だけど、自分の道を進んでみよう!」
少しずつ、少しずつ…。
迷っている方の背中を軽く押してくれるお話です…。
名前 | 井田 速美 |
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職業 | 農業 |
イ:井田さんの家はどのぐらい続いているんですか?
井:今8代目で240~250年ぐらいです。この地域で一番古い家は400年ぐらい続いています。
イ:現在栽培している梨は、いつ頃から始められたんですか?
井:70年ぐらい前です。その前は養蚕をやっていました。朝鮮人参を韓国へ輸出して、結構儲かっていた時代もありました。
イ:時代とともに変遷があるんですね。
井:昔、このあたりで庄屋をやっていた家が、韓国との貿易をまとめたり、周辺で採れていた砂鉄をまとめる問屋のようなこともやっていました。当時この地域の人たちは外に出ることがほとんどなく、砂鉄を納めに出た時に情報を仕入れて農業の参考にしていたということです。
イ:どんな情報ですか?
井:「次は何を植えればいい」とか、「どういうものが売れているか」とか…出た時に情報交換をする。そういう風土があったんですよ。
イ:同じ土地に住みながら、時代の変化に対応して、やることを少しずつ変えて生活していく…。これは結構大変なことだと思います。
井:昔は、うちもちょっとした田んぼがあって、それで食べていけました。戦後食べられないようになって、「何とかしないといけない」と思っていた時に、「梨をやっていた人が儲けた」とか「みんな儲けてる」という話を聞く。そうするとやりたくなりますよね。それで梨の生産が始まったんです。私で三代目になります。
イ:井田さんは、今おいくつですか?
井:63歳なります。
イ:跡を継いだのはいつ頃ですか?
井:高校出て20歳の時から親と一緒にずっとやっていましたけど、途中で親父が農協の役員になってから、ばあさんと家内と3人、それに臨時雇用の方と一緒に畑をやりはじめたのが30歳ぐらいですかね…はっきりとは覚えていないですけど…。
イ:自然に跡を継いでいったという感じですね。
井:小さい時から農業って言われていたので、そんなものだと思ってました。
イ:若い時に、他に何かやりたい仕事はなかったんですか?
井:継ぐように言われていたし、収入を考えても悪くない時代でしたから…。そうなると、他に勤めるのも面倒くさいじゃないですか。だから「農業でいいかな」と決めたんですよ(笑)。
イ:農業をやることが、金銭面でも結構いい時代だったんですね。
井:逆に「農業の方がいい」という時代でした。その頃は農業系の学校も応募者が多かった時代です。そういうブームみたいなのがありました(笑)。今の時代も「農業がいい」って、後継者じゃない人たちも勉強しているようですけど、そういう時代があるみたいですね。
イ:若い時は、どういう生活をしていたんですか?
井:お金はないですけど、使う事もなかったですから、別に不自由していませんでした。「そういうものだ」と思って生活していました。
イ:農園では、梨以外に何か作っているんですか?
井:親が40年以上前に土地を買って、そこを造成して柿を作りましたが、当時はなかなか儲かりませんでした。「桃栗三年、柿八年」って言いますけど、投資してから形になるまでに時間がかかるんです。でも、この地域は梨でも柿でも造成に取りかかったのは早かったです。
イ:造成しても収益が出るのに長い時間がかかるとなると。その間はどうやってしのいでいたんですか?
井:他の地域が古木になった時に、ちょうどこちらが最盛期になって何とかしのげたんです。
イ:調子がよくなってきましたね。
井:いや、そんなに簡単ではありませんよ。昭和59年に大豪雪があって木が倒れるし、その後、黒斑病っていう二十世紀梨の病気が広がり打撃が大きかったんです。これは一回発生すると何年も続くんです。
イ:収穫はどれぐらい落ち込むんですか?
井:大豪雪、病気の他に、他県でも梨を作り始めて競争が激しくなりましたから、長期で考えると3000ヘクタールくらいあったものが、今1000ヘクタール前後になりました。
イ:3分の1ぐらいになったわけですか…。他県では主にどういう品種を作っていたんですか?
井:幸水とか豊水とか、そういう品種が出てきて、栽培地域も熊本から秋田あたりまで作られるようになりました。
イ:そうなると、生産量も増えてくるわけですよね。
井:そうです。それに二十世紀は糖度が低くて栽培も難しいんです。私が栽培方法を教えてもらった先生が「二十世紀作ったら何の作物でも作れる」って言うぐらいですから…(笑)。
イ:そんなに難しいんですか。
井:そうでもないですけどね(笑)。結局、栽培には観察力が必要なんです。その先生の他にも、教えを受けた方は何人かいます。栽培の技術っていうのは、そういう人との出会いがあって、いろいろ教えてもらって身につけていったんです…。
(取材/2013年8月20日)
井田農園
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