今回登場する大下志穂さんは、
多くの作品を生み出しているアーティストなんですが、
最初からそれを目指していたわけじゃないんですね。
いろいろなことを点と点を結ぶように経験しながら今に至るまでのこととか、
これからのことついての考えがとても面白い。
そういうお話を、みなさんにおすそわけしたいと思います。
名前 | 大下 志穂 |
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職業 | アーティスト |
イ:今までのお話は、カナダ時代の時の「カバン一つでどこにでも行ける」という言葉にまとめられると思います。気軽で身軽な感じ。すごくいいですよね。
大:私の人生で最優先なのは、自由であることだと思っています。「自由であるために何をするか、何をして生きていくか」それで今の生き方を選んだんですね。今はこの方法しか知りませんが、他の方法が見つかれば、また違うことをやるかもしれないですね。でも、どういう道を進むにしても、あくまでも自由が優先なんですね。好きな時に、好きな所に行きたい。カバン一つで。
イ:そこが違いますよね。現実には「不自由さの対価としてお金をもらい生活をしていく」という人が多いでしょうから。
大:不自由ってことが、すごく嫌なんでしょうね。
イ:でも、「少しは不自由しないと自由になれない」ってこともわかっているんですよね。
大:もちろん。お金がないと手にはいらない自由もあると思うし、でも、今はお金には換えられない「自由」を大切にしたいですね。先のことはわからないですけど。
イ:これから先もそうなんじゃないですか?
大:たぶん。でも、これから先のことは誰にもわからない。考えてもしょうがないと思うので…。たとえば、結婚するとか、子供が生まれたとしたら、自分の優先順位が変わってくるかもしれないし、そうでないかもしれない。今は一人だから、このライフスタイルを謳歌したいと思っていますね。
イ:そういう人から見たら、不自由な人ってどう見えるんですかね?
大:尊敬しますよ。だって、自分にはできないから。だからこうなっちゃってるんで。それができている人は、尊敬しますよ。
イ:なんか、その言葉を素直に受け取れない自分がいますけど…。
大:素直に受け取ってくださいよ(笑)。どんな人にも、生まれた役目がきっとあると思います。私が生きてきて形作られた性格や考えにも、役目があると思うんです。役目があるからこそ、これからも自分にしかできないことをしようと思っています。
イ:たとえば、私にはどんな役目があるのかわかりませんけど、今までの話を聞くと「自分にも、何かできるんじゃないか」という気がしてきました。
大:「いくつになっても、自分さえ望めば何にだってなれる」と思いますよ。
イ:「何だってなれる」…なれますか?
大:なれます。心の底から本当に望めば。上っ面じゃなくて、自分の心の底の声が聴けるくらい、自身のことを理解している人が望むのであれば、何でもかなうと私は思いますけどね。
イ:「なりたい!なりたい!」って言うだけではダメですね。
大:それは本気じゃないですね。よく「自分はこういう理由があったからあきらめました」っていう人がいますが、そういう人は、そこまで本気じゃなかったんだと思います。世間体とか周りのことを気にしているうちは、シンプルに自分の声を聴けませんから、本気になれない思う。本気で望んでいる人じゃないなって思います。そういうのは憧れに近いものですね。
イ:夢と憧れは違うんですね。
大:私の場合は、夢だとも思っていなくて、実現するものだと思ってやっています。
イ:大下さんが、いろいろと表現されているものの中で、私が絵と同じぐらい気になっているのが写真です。ブログとか拝見しているんですけど、結構柔らかい感じの作品がありますよね。
大:写真も好きなんですよ。最近、撮ってないですけど。
イ:写真は、学んだことがあるんですか?
大:ないですね。撮り始めたのは、カナダに行ってからで、最初は日本やタイの友達に近況を知らせるためでした。ブログにアップしたら、みんなが「写真うまいね」って評価してくれて…。
イ:大下さんが撮った写真は、柔らかい印象ですよね。自然が優しいという感じです。
大:ありがとうございます。写真も、将来作品展みたいなものをしたいなって思っているんですけど、写真熱が落ちているので、まだ時期じゃないかな…。もっと、自分が落ち着かないと撮れないですね。
イ:そういう周期みたいな熱があるんですね。
大:ありますね。今は人との繋がりという意味で人間に興味が向かっているんですね。たぶんたくさんの人と関わりすぎちゃっているんだと思うんですけど、それを整理しないといけないなって。
イ:人間を整理するんですか?
大:何でもかんでも、引き受け過ぎっていうか、つながりすぎちゃって…。
イ:つながりすぎ?
大:でも、その過程を経て、つながっていく強い絆ができていくと思います。出会ったものとかシャットアウトするのが嫌なんですよね。人間の関係って、自然と淘汰されていくと思うので…。それが落ち着いたら、写真とか自然に目がいくかもしれませんね。
イ:今は目がいきませんか。
大:そうですね。写真を撮るって行為に目がいってないです。景色をみるとか、植物を愛でるとかはしますけど…。前は何でもカメラに収めたかったのに、今はないですね。心が「わやー」ってしちゃっているんでしょうね。
イ:今ひとつ私にはわかりませんが…。
大:(笑)私もわかっていませんよ。自分が。
言葉では、なかなか…。私をわかってもらうには、まだまだ時間が足りないですね。
イ:そうですね。たぶん言葉だけじゃないんでしょね。
大:言葉にしてしまうと本物じゃなくなってしまうような気がして苦手なんですけど。本当のことは、なかなか伝わらないです。言葉では。そう思いませんか?
イ:伝える手段のひとつでしかないんでしょうね。言葉は。
大:そうですね。だから絵や写真、自分の作品を通してコミュニケーションをしたいんでしょうね。
(取材/2013年9月18日)
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